2022年11月18日(金)、一般社団法人大学IRコンソーシアム×ベネッセ文教総研×エンロールメント・マネジメント研究所主催「IR3団体合同シンポジウム」のジョイントイベントとして、第16回EMIR勉強会を開催いたしました。昨年度2021年度と同様に、本年度2022年度もコロナ禍の影響を受け、オンラインイベントとしての開催となりました。
13時開会、弊研究所・所長福島真司の恒例のオープニングトークを皮切りに、テーマ「誰が、何のために、何を可視化したいのかを考える -『全国学生調査』をナショナル・スタンダード調査に育てるために-」のもと、まずは、米国のIRの一線で活躍してきた柳浦猛氏(筑波大学 教学マネジメント室・准教授/弊研究所・客員准教授)をキーノートスピーカーに迎え、主に、米国の全国的な学生調査の事例から、日本への示唆をお話しいただきました。柳浦氏から、「全国学生調査」は各大学でも実施出来るような内容でなく、中央省庁にしかできない定量的なデータを用いた調査を実施すべきという提言をいただきました。
その後、「全国学生調査」を取り巻く、大学職員、IR専門職の大学職員、大学教員、そして、大学の学生の各ステークホルダーから、学生調査は、どのような価値を生み出せているのか、まだ生み出せていない場合、どのようにすれば価値を生み出せるのか等について、あくまで個人のお立場から話題提供をいただきました。
話題提供者は以下の通りです。
① 大学職員の視点から/深堀太博氏(甲南大学フロンティア研究推進機構事務室)
溝端祐介氏(同全学教育推進機構事務室)
② 大学職員(IR専門職)の視点から/相生芳晴氏(学校法人上智学院IR推進室長)
③ 大学教員の視点から/日下田岳史(大正大学EM研究所・専任講師)
④ 大学生の視点から/大正大学学生有志
話題提供者の中でも、学生さん2名から、学生調査への忌憚のない意見やコメントをお話しいただことには、オーディエンスの皆様からも大きな反響がありました。「誰のため」を議論する際に、私たち大学内部関係者側の都合だけで、本来の受益者であるはずの学生を置き去りにする、あるいは、アンケート調査に回答しない学生は(大学マネジメントに協力しない学生は)レベルの低い学生だと決めつけるような姿勢であれば、このアンケート調査は、少なくとも学生のためにはならず、大学や監督官庁だけに利するものとなり、結局は、(この場合は学生や保護者も含めた)大学の内部関係者以外の社会からは、納得感のある調査にはならないのではないかと思わされました。
その後、話題提供者・登壇者全員で、オープンディスカッションを行いました。ここでは、オーディエンスのみなさまからの声を適宜リアルタイムアンケートシステムで受け取りながら進行し、極めて限られた時間でありましたが、登壇者同士のやり取りに加え、オンライン参加者からの質問やコメントも受け、議論を進め、例年通り熱気ある会となりました。特に、IR含め大学マネジメントサイドにとって都合の良い学生と、学部にとって理想的な学生は、当然ではありますが、必ずしも一致しているわけではないこと、そして、誰のためにこの調査は実施されるべきなのかを、常にIR関係者は真摯に考えながら、今後、調査、分析を行う姿勢が求められるのではないかという点が、論点となりました。
全体のプログラムは以下の通りでした。
13:00 オープニングトーク 第16回EMIR勉強会開催の位置づけ
13:10 キーノート 「米国の学生調査から考察される日本の学生調査への示唆」
13:40 話題提供 「各ステークホルダーから見た全国学生調査の課題と可能性」
15:55 質疑応答、話題提供者と参加者によるオープンディスカッション
(モデレーター/弊研究所・所長 福島真司)
16:55 クロージング
事後アンケートでは、例年通り、各プログラム共に、約80%~90%を超える満足度を頂戴しました。参加してくださったみなさまからには、心から御礼申し上げます。2023年度も開催予定ですので、またぜひお会いいたしましょう。
なお、当日のリアルタイムアンケートシステムでは、多くの参加者から匿名でご回答をいただきましたが、示唆に富むデータが得られました。そこで、当日にも弊研究所・所長福島が申し上げた通り、当日参加なさった方の中で、希望する皆様には、ローデータ(個人情報は一切含まれていません)をご提供いたします。ご希望の方は、以下の弊研究所HPのお問い合せフォームから、その旨リクエストしてください。どうぞよろしくお願いいたします。
大正大学EM研究所HP お問い合わせフォーム